11月21日に、日本キリスト教会宇都宮松原教会で2人のお坊さんが対談イベント「サンタdeトーク!子どもの貧困に、お寺と住職は何ができるか?」を開催しました。このイベントは「子どもの貧困撃退♡チャリティ サンタdeラン&クリーン」のPRと子どもの貧困の周知のために行い、オンラインで40人ほどの参加がありました。
荘厳な十字架の前で、光琳寺の住職である井上広法さんと正光寺の住職である西村慈祐さん、そしてサンタ帽をかぶった司会(宇都宮大学生の佐藤優さん、とちぎ市民協働研究会の土崎雄祐さん)が並びました。何ともめずらしい光景です。
最初、井上さんは「お寺の住職がサンタのイベントで話すなんて、キリスト教の方に失礼になるのではないか」と感じたそうです。しかし普段から「何かを排除するのではなく、なんでも取り込もう」という思いを大切にしているため「教会でやるのなら登壇しよう」とオファーを引き受けてくださいました。そんな井上さんは、毎年家庭や地域のイベントで積極的にサンタになっているそうです!お寺の枠にとどまらない活動をしているお二人に、その原動力をお聞きしました。
「子どもたちに、愉快な大人の背中を見せたい」(光琳寺住職 井上さん)
井上さんは「むしろ自分は、従来のお寺の機能を現代に置き換えて活動しています」とのこと。江戸時代、お寺は戸籍管理や病院、寺子屋、井戸端会議など、地域の中心で文化を継承する場所でした。しかし、学校や病院、行政など機能ごとにお寺から分離していき、現在残ったのは冠婚葬祭。かつてのように誰でもふらっと来られる場所を目指して活動しているそうです。
たくさんの取り組みの中から4つご紹介します。
①毎月1日に朝のラジオ体操:地域の方々と時間をともにしています。
②フードバンクの食品回収箱の設置:食品回収箱を常設し、かつ、お寺の催しにもリンクした形で食品寄贈を呼びかけています。ラジオ体操参加者には『心と体を整えるラジオ体操。自宅のパントリーを整えてから来てください。賞味期限が切れそうなものは持ってきてください』と事前に連絡。心のハードルが下がる素敵なメッセージです。
③aret(コワーキングスペース)の運営:地域のNPOや企業、若者とのふれあいの場も創り出しています。
④寺子屋レボリューション:2022年11月20日に行ったこのイベントでは、3つのお寺を会場に、「行きつけのお寺を探そう」と題し、子ども向けのワークショップ等を行いました。お寺を身近に感じてもらい「おじいちゃんおばあちゃんになっても、こまったらお寺に来てごらん」というメッセージで開催したそうです。
「境内でやるのも大事だが、自分から外に出ることが大事」と語る井上さん。特に子どもについては「今の子どもたちには明るい未来がない。愉快に生きている大人の背中をどう見せるか、ということを考えています。それは子どもたちの財産になるはず。『なんかわかんないけど、あの大人はキラキラ輝いている。あの生き方いいな』というのをいかに焼き付けられるか」とのこと。井上さんの原動力が少し見えた気がしました。
「楽しくて、子どもたちの夢につながる場所を作りたい」(正光寺住職 西村さん)
西村さんは「お年寄りからお寺を取り戻す」との思いがあるそうです(注:語弊を恐れずに言うと)。確かに、現在お寺と言えば年を取ってから関わるようなイメージがあります。西村さんは「お年寄りにとどまらずどんな人でも、用がなくても気軽に行ける場所になっていけたら」と語ります。実際に、隔週で「子どもの遊び場」としてお寺を開放したり、過去には親子向けの怪談イベントなども開催しています。
また、回向(えこう)というプロジェクトでは、お供え物を地域の団体に寄付できる仕組みを作っています。回向とは「回し受ける。みんなの力をひとり占めしないで回していきましょう」というような意味合いを持つ仏教用語。お供え物と言えば、果物やお菓子のイメージがありますが、実際にルールがあるわけではありません。しばしば食品ロスになってしまうことに心を痛めており、このプロジェクトを思いついたそうです。反響は高く、檀家さんの90%以上がえこうセットを利用しています。「理解した上でこのセットを選んでくださるので、檀家さんも満足そうに笑顔になる。ここがみそだと思います」。お寺をハブとして関わる人みんなが笑顔になる、循環の仕組みづくりです。井上さんも「地元で循環の仕組みが作れるのが素晴らしい」とコメントしました。
今後のお寺の役割について西村さんに聞くと「楽しいことをやっていこうと思う。地域のいろんな可能性を広げたいです。僕らの身の回り以上に世界が広がっている。子どもたちがいろんなことに触れられて、夢につながる場所を作りたいです。そうすればきっと、子どもたちが地域に何かを回してくれる」。
お寺で取り組みたい子どもの貧困撃退アクション
子どもの貧困にお寺は何ができるか、今後の意気込みも含めて紙に書いていただきました!
🌟井上さんは「サンタと地蔵」。
「日本のクリスマスは『持っている人・持っていない人』の分断をはっきりさせるものになってしまっている。例えば、お金があったり家族がいたりする人には楽しいイベントですが、クリぼっちという言葉もあるように孤独を感じる人もいます。そこを救済するのがサンタクロースだと思います。社会の中でサンタの役割をしている人はなかなかいない。
そこで、笠地蔵のおとぎ話もあるように「お地蔵さんは実はサンタと一緒なのではないか」と井上さんは言います。「サンタdeランのイベントを通じて、社会の中での救済者が広がっていくのはとてもいいと思います。社会の中に、たくさんのサンタやお地蔵さんの役割を担う大人を発掘していきたい」とのこと。
🌟西村さんは4枚も書いてくれました!
「子どもは未来」
「楽しいことばかりありますように」
「お寺はみんなのゴミ捨て場」
「かっこいいお坊さんになってね♡」
子どもの貧困をなくすには様々な取り組みが必要で、一朝一夕では難しい。でも、いろんな形で地域があったまっていって、子どもの貧困だけではなくいろんないい影響が起こっていくといいと語りました。「自分が一番楽しみたいですね」と話す西村さんの瞳はキラリと輝いていました。(それぞれ、素敵な想いが込められている4つの言葉なので、詳しく聞きたい方はぜひ正光寺へ!)
長い歴史のあるお寺で、今、そしてこれから何ができるかを真剣に楽しく実践しているお二人。お話を聞いているとわくわくして、子どもにとっても大人にとっても愉快な地域になったら楽しいだろうと思いました。お二人に共通していたのは「お寺をもっと身近な場所にしたい」ということ。私も、困ったときだけでなく、なんとなくふらっとお寺に行ってみようかなと感じました。
「子どもの貧困をなくしたい」という思いで企画した本イベント。神様も仏様もきっと温かく見守ってくださり、大成功で幕を閉じました!ご協力いただいたゲストのお二人、日本キリスト教会宇都宮松原教会の皆様、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
サンタdeランのご寄付は12/31まで募集中。栃木県内19の民間の子ども支援団体への寄付になります。このブログがいいね!と思った方は、想いを形にしていただき、ご寄付で栃木の子どもの未来を明るくしましょう!(ミヤサカ)
サンタになって、子どもの貧困をなくそう。
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