活動ブログ

【円卓会議報告】外国ルーツの子どもの貧困レポート 多文化共生への第一歩

 3月20日(日)に子どもSUNSUNプロジェクト 定期円卓会議「にほんで暮らす海外につながる子どもと家族とつながる・ささえる調査のレポート第1弾」をリアルおよびオンラインで実施しました。13時~16時の3時間、内容の詰まった調査報告に、当日は40人ほどの参加者と改めてこの問題の重大さや様々な問題・課題に気づき、今後の活動への方向性など確認しあいました。レポートの概要をまとめましたので、ぜひご一読ください。

「ザイリュウシカク(在留資格)」ってなに? 荻津守さん(済生会乳児院院長)

 医療ソーシャルワーカーとして病院での対応した経験など踏まえ、知っているようで知らなかった「在留資格」について整理した。日本の制度として在留資格は「日本にいても良いよ」といった許可的なもので、人権が反映されていない点が問題であることを指摘。短期滞在や特定活動に分類されると、制度的に国保加入できない、それが自由診療による200~300%の医療費請求が発生することから、実質的に病院にかかれない現状があると。

 また、ウクライナ難民の問題もあるが、日本で難民認定がなされる状態がかなり低く(認定率0.5% 独41.7%)、「共に生きる社会へ」といった中でも、日本の中ではまだまだ仲間以外は認めない、排除する意識がベースにある。そして、在留資格がある家庭の子どもにおいても、置かれる環境により義務教育から漏れ落ちてしまう問題が潜んでいる点について問題提起した。

外国ルーツの子どもと家族に、医療」と「教育」の支援は「その時」あるのか、ないのか? 日下部実さん(協立診療所医療ソーシャルワーカー)

 医療機関から見た報告として、外国人家庭では日本の社会保障が使えない、知らないが上に、生活の立て直しが出来ずに、どん底に落ち込んでしまう。そして、生活の上で健康(医療)が後まわしになっているなど、社会的な要因で健康を害する現状がある。

 実際に関わった患者Sさんの事例から、相談ができる窓口やNPO等支援者の伴奏支援が重要であることの報告があった。その活動から見えてくるものとしてソーシャルアクション(社会変革)の必要性、特に栃木県でも多文化ソーシャルワークの資源を作ること、外国人コミュニティに閉じない、グループとして孤立しないような、国籍のルーツにかかわらず子どもどうし仲良くなれる子どもの居場所づくりに期待する。そして、社会的弱者がそばにいても気づかないこともあるため、人権感覚のアンテナを高く持とうと呼びかけた。

「子ども食堂」は外国ルーツの子どもの最強の「居場所」になれる!と、私は確信した! 荻野友香理さん(キッズハウスいろどり・子ども食堂)

 全ての子どもたちの食べる・学ぶ・遊ぶ・安心をワンストップで支える拠点であるキッズハウスいろどりでは、2018年、とある2つの家庭との出会いから、外国ルーツの子どもへの支援がはじまった。

 言語の問題、文化や考え方の違いなどから周りとの関りを閉じた家庭と子どもたち。時間をかけ、ただただ寄り添う関わりを大事にしている。信頼関係を構築していく過程には、大学生が勉強を教えたり、進路相談に乗ったり、料理や遊びなど日本の子どもたち同様に体験の貧困、格差を埋めることで自身を取り戻していく様子が生々と伝わってきた。

 「この居場所を利用して本来の自分を取り戻すことができた」といった子どもの発言や、周りとの関りに否定的な保護者が居場所に信頼を寄せる姿に変わった様子などから、この子どもの居場所が多文化ソーシャルワークとしても十分な役割を果たすことができ、更には地域の拠点として広がる可能性を示唆するものである。まさに子どもの最強の味方である。

「居場所」のなかった外国ルーツの子ども、家族の危機で陥る「孤立」「貧困」とその先の「闇」 長澤正隆さん(北関東医療相談会)

 特に外国籍・生活困窮者の保険、医療又は福祉の増進を図る活動を目的とする団体として、仮放免者(3,013人)、難民申請者(10375人)を中心に全国を対象とした支援を実施している。この中からの事例報告は、子どもが家庭に居場所が無く、孤立化し、闇に落ちていくケースが多い。在留資格の問題もあり、親は生活するのに必死で劣悪な労働条件下で仕事に従事する。その代償として子どもとの関りが稀薄になり、子どもが孤立していく。子どもの居場所がバーやスナックであり、闇に落ちていくのである。そして、それらの子どもが団体と関り始めると問題行動が起きなくなっていく。このことからも、もし、闇に落ちる前に先の報告になった「子ども食堂」「子どもの居場所」があったならば、救われる子どもたちがどんなに多くいるのではないかと思うと、子どもをひとりにしない居場所作りが重要であり、そこで子どもと向き合う大人や若者の育成がカギとなる。

「妊娠・出産~保育・子育て」外国ルーツの人たちも、日本で安心して暮らせるための支援を考えた 青木宏統さん(NPO法人そらいろコアラ 保育士)

乳幼児の保育・調査チームの活動報告として、日本の保育園の現場視点から問題を広げ、地域や文献の調査、そして多文化保育を実践している先進地域への見学から、違いを受け入れられる多文化共生社会が豊かな社会であると、この外国ルーツの子どもたちやその家族が安心して暮らせる社会になる鍵であると。また、団体のA市で行政と連携した活動からは、先の報告にある在留資格の問題(無保険)から飛び込み分娩にならざる負えない事情や高額な医療費返済を抱え込んだりといった困難事案に直面しており、これらの直接的な解決策ではないが、国籍関係なく、地域に頼れるアクセスしやすい居場所があれば、より豊かな社会になれる。それが市民の力で、この子どもSUNSUNプロジェクトで創っていけると。引き続き、A市での調査活動は、直接外国人家庭へのインタビューへ展開して行く予定。

まとめ

 今回の事例報告にもあったが、医療と地域(居場所)の連携などにより子どもが自分の居場所を持つ事で、立ち直る、自信を持って社会に繋がって行ける。そのことから分かるように地域社会が如何にSOSを感じ取れるアンテナを持っているか、キャッチしたらどこに繋げれば良いのかを持っていること。そのためにも繋がり先が多ければ多いほど良い。そして、この栃木県、この宇都宮でそれが出来つつある。外国人が情報にアクセスしやすい外国人支援センターなるものを作り、そこで受け付けたケースを子どもSUNSUNプロジェクトのメンバーそれぞれが社会資源へのつなげる役となって社会と関わって行く。困難事案については、行政と民間とが連携しながら現場に繋がって行くような技や行動力を持って行く。

 そのためにも、まだまだ日本では、自分が分かるものしか受け入れない、排除の動きが非常にある中で、地域で困っている状況をみんなで理解し、みんなで生活しやすい社会にするのだとの思いを広げる必要がある。

 子どもSUNSUNプロジェクトは、今後も子ども食堂や居場所、医療、保育などあらゆる社会資源につながるユニバーサルな活動へと発展させる。(青木)

●子どもSUNSUNプロジェクトでは、NPO・企業・病院など多様な人が集まり、子どもの貧困をなくすためのアクションをしています。プロジェクトメンバーと寄付を募集中。

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